
元天ぷら屋さんで倉庫になっていた部屋(築約70年木造2階建ての一部)を美容室に改修するご依頼。
お店の正面木部はグレー色にペイントされ、引違いの汎用アルミサッシが設置されていたが撤去し、木部を研磨クリーニング(ペーパー#100〜3000 + 蜜蝋ワックス)し、もともと使われていた鴨居溝を復活させて新たに木製引違いガラス戸を設置した。
引手、錠、埋込式甲丸レール、暖簾用受け(屋内側)、ピポットライトのソケットは真鍮製で統一した。

お施主さまの母親が隣の部屋で同じく美容室を営んでおり、かつて使われていた鏡を譲り受け、研磨クリーニングした上で再利用することにした。
木製ガラス戸はよく目のこんだ杉板無垢材赤身を使用し、雨に対しても比較的強い材料を選定した。
また、建具下框の上場は、ある程度外部の雨などの跳ね返りを受け止める高さとし、土間腰壁上場のライン、部屋奥のシャンプー台小上がりのレベルを引き通しで合わせる設計とした。

カウンターとして蘇った長持ちは、お施主さまが知合いから譲り受けたものを「水洗い + 陰干し」して再利用したもの。

エアコンは脱着式ホワイトアッシュ製練付合板フラッシュ幕板で目立ちにくい状態に。(ボックス上下は通気用に開放されています)
ミニキッチンは最小限サイズに設計。
壁上部に見える竹木舞は、かつてのブレーカーがあった場所。
記憶の一つとして敢えてそのまま残しています。
既存開き戸は水洗いして研磨し、蜜蝋ワックスがけ、真鍮取手も研磨して復活させています。

セットイス前カウンター、シャンプー台用小上がりフローリング材はホワイトアッシュ製。
障子の割付は、いわゆる吉村障子。障子紙は、用途の性質上耐水性のあるワーロンを採用。

奥のトイレ、洗面へとつながる小座敷。もともと障子の桟は居間側だったが、店舗側をハレの場として反転させた。
柱や鴨居、敷居、天井、襖の木枠はすべて研磨クリーニング。
タタミ縁は少し細めの七分縁。

2つあった鏡は研磨クリーニングして洗面にも再利用。
既存のアピトンフローリング床も研磨した上で、浸透性のウレタンを塗布した。

居間の壁(お店側の鴨居から上の壁も同仕上)は、聚楽壁だったが経年変化により朽ちてきていたので、上塗りのみ丁寧に剥がしたうえで、中塗り土を掻き落としのテクスチャーに表現し、既にあるものを最大限活かす実験的仕上げとした。

お店のロゴも担当させていただきました。
DATA
COMPLETION : Jun. 2023
LOCATION : Takamatsu, Kagawa, Japan